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2010年11月 アーカイブ

色彩の尽きぬところ 4

暗い色の少ない夏でさえこの調子ですから、春や秋冬のシーズンには、その頃の実感として、猫も杓子もチャコールグレーを着ているような大流行に見えたようです。


婦人服の色としては1961年以降また減少しますが、紳士服の色としては、以後も都市サラリーマンの通勤着として、すっかり定着してしまいました。


暗い灰色や、オフブラックに近い濃紺色などは、1人ひとりの服の色として見ればなかなか深みのあるシックな色なのですが、出勤時の大集団の色となるとやはり異様な感じがすることは確かでしょう。


故花森安治氏はこれを「どぶ鼠色」と評しましたが、戦後生まれの日本語の新色名として、あるいはもっとも有名になったのがこれかもしれません。


昔の染色で、「玄」とか「墨染」と呼ばれた色も、今なら当然オフブラックか暗い灰色に分類されるところです。


墨染は、喪服の鼠色のものをいうこともあります。

色彩の尽きぬところ 5

世俗の人の黒い着物には、たいてい家紋が入るのが常識ですが、仏家の常服である墨染の衣には紋がないし、紋の入らない墨染の衣装には、他にも忍者が用いたという黒装束や、歌舞伎の黒子の衣装もあります。


忍者の墨色は、闇にまぎれて見えない色であり、黒子の墨色は存在しても無いに等しい影のような色です。


サラリーマンやお役人愛用のダークスーツのどぶ鼠色も、組織の中に影のようにまぎれこむ効用がある色なのかもしれません。


玄というのは奥深くてよく見えない、ほの暗くてよく見えない様子を表わす文字で、天の色とされています。


宇宙ロケットや人工衛星から写した空は、大気圏の外では散乱光がないために確かに暗くて星の他には何も見えません。


中国で北方を表わすのに玄の字が使われるのも、北はうす暗いからだといいます。


玄色というのは赤味を帯びた黒色だというから、これもオフブラックでしょう。


どうやらどぶ鼠色の先祖は玄にちがいありません。

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