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2010年12月 アーカイブ

色彩の尽きぬところ 6

奈良時代に「橡色(つるばみいろ)」といわれていた色も、後世「黒橡」と呼ばれた色も、櫟の実や橿の実などの濃い煎汁に鉄媒染をしてできる色です。


やはり暗い灰色の一種ですが、墨染や玄と同様に、昔はやはり黒として認識されていたことでしょう。


黒い色や闇にかかる枕詞である「ぬばたま」というのも、アヤメ科のひおうぎという植物の実のことだといいますから、とても今なら黒の代表になるはずはありません。


日本の鉄色は、鈍色とほぼ同じ緑味の灰色のことらしいが、英語の「スチールグレー」は、それより暗い灰色になるようです。


砲金の色「ガンメタル」も同じくダークグレーの色名になっています。


色の明暗によって、軽重感が左右されることが多いです。


一般に明るい色は軽く感じ、暗い色ほど重い印象を与えますが、金属でも鉛や鉄などの重い金属は、やはり暗い灰色の色名になっています。


現代人は、黒と、黒に近い色や暗い灰色を厳格に区別するようになりました。


しかし、その暗い色たちにまだあまり結構な色名を与えてはいません。

色彩の尽きぬところ 7

この地上では、光を完全に吸収しつくしてしまうような完全無欠の黒という色を、実際に見ることはできません。


しかし、すべての波長の輻射を完全に吸収する物体として、完全黒体というものが仮定の上では存在しています。


そのために、この黒体はある決まった温度では、すべての波長で最大の熱放射をする物体であるともされています。


古代ギリシャの思想では、白と黒、すなわち光と闇がすべての色のはじまりでしたが、量子論では、黒体という理想的な黒色物体は、すべての光の窮極であるとともに、光の放射の根源ともされているのです。


すべての色の尽き果てた黒体が、すぺての色の出発点でもあるという意味では、黒と白でさえ本質的に同じもので、色という現象において結果が逆になるにすぎません。


しかも、完全な光の欠除という客観的条件が、人間に完全な黒の感覚をもたらすとはかぎらないというところが、色というもののいかにも不思議なところです。

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